日記

囚人と女歯科医

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2011年まで東京のタクシーに乗っていたのだけど、その頃に書いていたメルマガから転載です。

■ 囚人と女歯科医

 

「三茶まで」
白衣をきた女性が乗ってきた。
「3時までに着くかしら。急いでるんだけど」
声がかすかに上ずっている。
かなり急いでるんだなあ、と思う。
「今の時間、246はすいていますから、ぎりぎり大丈夫だと思います」
僕は乗車ボタンを押しながら、女性に声をかけた。

映画やドラマに出てくるタクシードライバーのように、時間を約束する
事を会社は禁止している。
間に合わなかった場合、かなりの確立でトラブルになるからである。
相手がまっとうな職業じゃなかったりしたら、目の玉や別の玉が飛び出し
そうになるくらい法外な金額を要求されたりするのだ。

「煙草いい?」
僕の返事を待たぬまま、女性はライターを鳴らした。
僕は煙草が苦手なのでできれば吸ってほしくないのだけど、それを口にす
るのも面倒だ。
「家ですうと主人に怒られるから」
女性は笑いながら言った。

煙草をすう女性客は多い。
男性客より圧倒的に女性がすっている。
テレビで萌え萌え光線を連発しているアイドルだって、タクシーの中では
親父のような顔をして煙草の煙を鼻や口からはきだしているのだ。
幻滅する。
煙草をすうと老化が早まるのに、何故、常に美を気にしている女性たちは
煙草を吸うのだろう。
エステに通いながらニコチンで細胞を殺し、プチ整形をしながらヤニで歯
を染めるのだ。
まるで、ジムの帰りに、居酒屋で暴飲暴食をする親父みたいだ。
理解に苦しむ。

「刑事さんにつれられて服役者たちがやってくるのよ」
「囚人ですか。もしかしたら、お客さんが診るんですか?」
「そうよ。歯を診るの」

「恐くないですか?」
「本人たちは手錠されているし、4人の刑事さんに囲まれているからね。平
気よ」
「大勢診るんですか?」
「今日は5人ね。本当に悪い人もいるけど、気分転換に来る人もいるみたい
よ。外に出るのがうれしいのか。私と話すのが楽しいのか」
女性はけらけらと黄色い声で笑った。
「ねえ。私いくつに見える?」
僕がお客さんによくされる質問のひとつで、一番困ってしまう質問である。
いつものように困って「ええっと……」と、口ごもっていると、女性は、
「73よ」
と、まっすぐな声で言った。
「えええ、ぜんぜん見えません」
正直な感想だ。
僕は室内ミラーで女性と目をあわす。
煙草をすう女性は老化が早まると思っていたが、そこには例外があった。

『女』としてあつかわれ意識の中で『女』として生きる事である。

ミラーの中の女性に、僕はふと森光子さんを重ねていた。

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